中央大学

鈴木研究室

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細胞計測用バイオチップ

 細胞の大きさをご存知でしょうか?ヒトなどの動物の細胞はおよそ10マイクロメートル(1マイクロメートルは1/1000ミリ), 大腸菌などの細菌で数マイクロメートルの大きさです.また,細胞内の小器官は1マイクロメートル程度,細胞を形作っている 構成要素であるタンパク質は10ナノメートルのサイズであるとおよそ理解しておけばよいでしょう.
 微細加工技術を使うと,マイクロメートルやナノメートルの構造をつくることができます.微細加工した流路や反応容器 (マイクロチャンバー,マイクロウェルなどと呼ばれます)を使って,化学実験や細胞の実験を非常に小さなスケールで 行うことができます.このような技術はマイクロ化学チップやバイオチップなどと呼ばれ(ほかにも多くの呼び方があります), この20年ほどで急速に発展してきました.
 では,バイオチップ技術は,実験室で行っている細胞やタンパク質,試薬の操作を小さく効率的にできるだけなのでしょうか? いいえ,微細加工技術を使うことで,もっと大きな利点が得られます.細胞は生物の最小単位であり,タンパク質は生物の構成 要素の最小単位ですが,これらを「ひとつひとつ」分離して調べることができるのです.私たち人間も個人個人で個性がありますが, 一見同じようにみえる細胞の集団でも,いろいろな点でひとつひとつ違うことがわかっています.例えば,がん細胞は,腫瘍が成長していく 過程でどんどん変化します.免疫細胞はものすごくたくさんの種類があることで,外部から入ってくる様々な物質に対応して 身体を守ることができます.
 当研究室では,細胞を「ひとつひとつ」調べる技術を開発しています.微細加工技術で作製した,細胞よりもひとまわり大きい程度の 小さな部屋(=マイクロチャンバー)の閉じ込めて,試薬に対する応答や遺伝子発現の様子を個々に検査するための技術を開発しています. これにより,従来の生物学の手法ではできなかった,細胞の多様性の解明に役立てます.

(左)個々の細胞をミクロの小部屋に閉じ込めて薬剤試験などを行うためのマイクロチャンバーデバイス.
(右)個々の細胞由来の酵素活性の計測.

(左)細胞の薬剤排出活性を計測するためのマイクロチャンバーデバイスの鋳型.
(右)輸送体を発現したHela細胞がマイクロチャンバーを覆うように培養されている様子.


本研究の一部は,JKAの補助事業により行っています
「単細胞培養・選別に向けたドロップレット操作システムの開発補助事業」

まんが:細胞分析チップ

個別の研究テーマ

テーマ1:シングルセル・細胞分離

生物の血液や組織には,いろいろな細胞が混在しています.これを,その特徴や性質,機能で分離して調べることは,細胞生物学研究や医療・診断において重要な技術です.マイクロ流体技術は,細胞と同程度のサイズの加工によりつくることができ,この目的と非常に相性がよいのです.
当研究室では,これまでに,細胞をマイクロウェル(マイクロサイズの穴)に個別に落とし込んで機能アッセイをするデバイス(H. Suzuki, K. Mitsuno et al., Lab Chip, 2017),エビの血球をサイズ別に分離したり,個別の部屋に分けて遺伝子解析をするデバイス(T. Murakami et al., Sens. Act. B, 2021; K. Koiwai et al, eLife, 2021)などの開発を行ってきました.

新技術説明会(2016/9/15)

テーマ2:細胞機能アッセイ用デバイス

細胞は,分子を合成したり,分解したり,貯蔵したり,動いたり,様々な機能を持ったミニ分子機械です.そのなかで,マイクロ構造を使って,細胞が物質を輸送する機能を評価するマイクロデバイスの開発を行っています.私たちは,マイクロウェルアレイと呼んでいる,直径と深さが10μmの穴がたくさん並んだデバイスをつくり,その上で接着性の細胞を培養することで,細胞が穴を覆うように接着する条件を見出しました.この構造を使うと,細胞から排出された物質がウェル内に蓄積するため,そのはたらきを局所的かつ高感度で検出することができます.これまでに,細胞が抗がん剤を排出する(薬剤耐性)機能の検出に応用できることを示しました(M. Tsugane et al, Front. Bioeng. Biotech., 2015).また,ここから派生して,接着性細胞をマイクロ溝構造の中で培養し,細胞の断面を高解像度で顕微鏡撮影するための技術を開発しました(S. Araki, M. Nakano et al., Analyst, 2019).

テーマ3:振動誘起流れによるマイクロミキサ

バイオチップ,マイクロ流体デバイス内の流れは,通常外付けのポンプによって駆動されます.チップは数cm角と非常に小さいのですが,ポンプは数十cmのサイズであり,全体のシステムは大きくなってしまいます.同学科の早川健先生は,ミクロの振動を使って,マイクロ流体デバイス内の流れを制御する技術開発を行っています.私たちは,早川先生と共同研究を行い,この技術をマイクロ混合(ミキシング)に応用する技術開発を行っています.また,この流れを数値シミュレーションで再現する研究を東京大学の長谷川洋介先生と共同で行っています(K. Kaneko et al., Micromachines, 2018).これを応用し,血液や唾液等に含まれるウィルスやナノ粒子を効率的に回収したり,検出したりする技術につなげる研究を展開しています.

本研究テーマは,以下の研究資金により補助していただきました

  • 2017-2018年度:中央大学特定課題研究費,「振動誘起流れを用いた微量・局所溶液混合」
  • 2017年度:東京応化科学技術財団研究費助成,「極微量の溶液混合を促進するポンプレスマイクロミキサーの開発」
  • 2015-2017年度:日本学術振興会科学研究費補助金(挑戦的萌芽研究),「接着細胞の垂直面高解像度イメージング法の開発」
  • 2014-2015年度:中央大学共同研究費,「超並列・高密度1細胞遺伝子発現解析へ向けたマイクロデバイス開発」
  • 2014年度:中谷医工計測技術振興財団助成金,「臨床応用に向けたがん細胞薬剤排出スクリーニングチップの開発」
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