中央大学

鈴木研究室

鈴木研究室

private
english

自己組織化工学

 人間がつくるものと,自然がつくるものの設計原理や加工・組立て方法は全く異なります.人間は最終的にできるものの全体像を イメージしてから細部を設計していきますが,無機・有機の結晶や生物などの構造は,自己組織化により自発的にできるため, 全体をみてつくられることはありません.動物は,受精卵が分割していき,様々な細胞や組織に分化して,構造や機能が自然に できてきます.アリがつくるアリ塚は,建築を指揮するアリがいるわけではなく,無数のアリの局所的な相互作用の結果つくられます.
 当研究室では,自然が採用している自己組織化・自己組立のルールに学び,新しいものづくりの技術を提案したいと考えています. 部品を容器の中に放り込み,振ったりかきまぜたりするだけで,何か面白い構造や意味のあるものができてきたとすれば, 想像するだけで楽しいと思いませんか?さらには,たくさんの組立を並列で同時に進めたり,壊れた構造も自発的に修復したりと いった利点も期待されています.
 では,生物のどのような原理を応用することが応用できるでしょうか?もちろん生き物ができるような高度なことはまだまだ無理ですが, 分子レベルで起こっていることは,ミリやマイクロといったスケールでも再現できるかもしれません.例えば,人工細胞膜の研究で 説明したリン脂質二重膜は,個々の部品(リン脂質分子)が親水性と疎水性の部分を併せ持っていて,水中で疎水部分が自己集合することで 自発的に閉じた膜(小胞)ができます.DNAは,相補配列を使って(A,T,G,Cの組合せ),膨大な配列の中から特定の部分だけに結合することが できます.タンパク質も,構造や結合の相補性を巧みに使って,ある特定の物質(基質)のみに作用することができます.これらの原理は, 人工物の組立にも応用できるのではないかと考えています.

微細加工で作製したマイクロ部品(左)と,それらが自己組織化により様々な形状に組上がる様子(右).

introduction of engineered self-assembly

click here for English version

まんが:自己組織化工学

個別の研究テーマ

テーマ1:マイクロパターンによる選択的結合

2000年前後から,MEMS(マイクロ電気機械システム)の分野で,自己組織化を工業生産に応用する研究がたくさん行われてきました.その中で,電子部品を基板に実装する技術は,もっとも実用化が期待されている応用の一つです.2000年代に,アリアンツという会社が,流体に浮かべたたくさんのRFID素子を一挙に基板に実装する技術を開発しました.最近でも,同様の技術を使って LED素子を高密度で実装する試みがなされています.
これらの技術では,融点が50度以下のはんだを使って電気的な接続・実装が行われます.あらかじめ基板または部品にはんだをつけておき,これらをお湯の中または表面でかき混ぜたり接触させたりすると,基板上の決まった位置に素子が配置されます.
しかし,単純なはんだの形状だと,素子の向きは制御出来ません.また,複雑な回路では,異なる種類の素子を決まった位置に配置するニーズがあります.
私たちは,はんだのパターンを制御することで,複数種類の異なる素子を,間違いなく決まった場所に配置したり(Kimura et al., Sens. Act. A, 2018; Okuyama et al., Sens. Act. A, 2020),電極の向きが決まっている素子を方向を揃えて配置する技術開発を行なっています.
はんだのパターンを工夫し,正しい結合の場合は接着面積が大きく,間違った結合の場合は接着面積が小さくなるようにすることで,撹拌の中で間違った結合がはずれ,正しい結合が保持されるようなシステムを組むことが重要です.

テーマ2:排除体積効果によるマイクロ部品の自己組織化

MEMS部品の自己組織化では,液状のはんだや紫外線硬化樹脂などが接着剤として使われます.一方,組み立てる部品がちいさいほど,これらの接着剤をうまくつけることが難しくなります.
細胞の中では,接着剤や化学結合を使わなくても,分子やナノ部品が結合する現象があります.排除体積効果と呼ばれる現象は,細胞内にタンパク質などの分子が非常に高濃度で存在することから,これが部品の配置に影響を与え,結合が生じます.この効果を利用し,数ミクロンから数十ミクロンの部品を結合させることに成功しました(Kawai et al., J. MEMS, 2019; Mori et al., Micromachines, 2019).簡易的かつ可逆的な自己組織化手法としての展開が考えられます.

本研究テーマは,以下の研究資金により補助していただきました

  • 中央大学個人研究費
  • 研究内容一覧に戻る

    SUZUKI LAB

    〒112-8551 東京都文京区春日 1-13-27

    中央大学理工学部精密機械工学科 2号館 5F

    Copyright © Nanobio Modeling Lab
    トップへ戻るボタン